婚約者候補は辞退させてくださいませっ!

24

「おはようございます。本日も宜しくお願いします。」

「マリーベル様。」
「おはようございます」


あれから毎日、簡単な計算作業を続けている。     

この部屋で作業する人達とも、顔見知りになった。

名前と顔はまだ一致しないけれど、挨拶や簡単な世間話ができるくらいの仲にはなれた。

まだまだ人前で話すことは苦手だけれど、
全く交流のしてこなかった自分にとっては、大きな進歩だ。

そのおかげで、苦手な計算がほんの少し分かるようになってきていた。

足したり引いたりなど、簡単なことは分かるのだけれど、何割や比率などが全くダメで。

ニコライ様は計算のことだけではなく、
私が尋ねた事に対して、快く答えてくださる。

一般常識の範囲なのだろうけれど、知らなかったことを知るというのは、楽しい。

学ぶことが楽しいと思えるなんて、信じられない。
ニコライ様は、教師としての資質があるのではないかしら。
素晴らしい才能を持ち合わせているのね。

色々なことを教わったわ。

例えば、この国にある4つの侯爵家のこと━━恥ずかしながら、自分の家名しか知らなかったわ。

 
領地での特産物や発掘物、農作物のこと。
潤っている領地と、そうでない領地との現状について。

国内や隣国の簡単な情勢なども。ニコライ様の博識に驚かされるわ。

記憶力が悪くて、まだ全部は覚えきらなくて、
こっそりメモをとったりするけれど。

この私がメモをとる姿を見たら、エレナは何て言うかしら。


神殿内にある図書室での、自由に閲覧できる許可もくださったわ。





あとは、貴族の子女として、出来て当然と思われている刺繍も全くしたことなくて……。

今までチャリティーバザーなどでは、きっとアンが刺繍したものを、私の名前で出していたのね。

ほんとに何もできないわ、私。

どうして、お父様達からお叱りも受けなかったのかしら。

どう考えても、こんな私を受け入れてくれる嫁ぎ先などあるはずがないわ。

ましてやアーサー様の婚約者だなんて、論外でしょうに。


 
刺繍に関しては、近いうちに指導してれる方を紹介してくださるそうだ。


ニコライ様は心当たりがあるとおっしゃっていたわ。

こういう時に、人脈が役に立つのね。

自分ではできないことでも、誰かの協力を得て解決したりできる。

ニコライ様は、知り合って間もない私に、親身になってお力になってくださる。

本当にお優しい方だわ。

私も、いつか、ニコライ様のお役に立てるかしら。

もっと、色々と努力したら、その時には……。
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