婚約者候補は辞退させてくださいませっ!

27ニコライ視点

カーギル侯爵家の次男━━世間では華やかなイメージだろう。

だが所詮は、庶子。

正妻の長男、3男(※書類上次男はニコライ)に比べたら私の存在などないも同然。

所詮は、ただのスペアにすぎない。

それでも、まだ母が生きているうちはましだった。

風当たりが強くなったのは、母が亡くなってからだ。

なぜ出て行かないのかと、義母より冷遇されていた。

唯一の救いは、義妹のミシェルだ。

彼女は、他の兄弟と接するのと同様に接してくれた。

多少、腹黒いところはあるが。

蔑んでくる義母や兄弟とは、違った。

父は、私には無関心だった。

何かあった時のスペアとして、問題を起こさず生きていればいいと。



そんな生活にも疲れ、私は母の実家へ世話になることにした。

いつまでも甘えるつとりはなく、働く決心をする。

王城勤めも考えたが……。

噂好きの貴族が多い中では、また生きづらいと判断した。

そんな時、神官長に声をかけられた。

私の境遇を気にせずに、雇ってくれた。

神殿は、家名を気にすることがない領域だと。


その時の私は、まるで天の救いだと勘違いした。

神官長の本性を見抜けなかった自分は、強がっていても世間知らずだった。


神殿は権力の及ばない特殊な領域。

その為、有力貴族はあわよくば、神殿を取り込もうと画策している。

神殿側は、そこにつけ込み多額の寄付と称して賄賂を受け取っている。

神官長は私服を肥している。

権力が及ばないとはいえ犯罪行為があれば、取り締まられる。

王家へ忠誠心の強い一部の貴族が、神殿を監視する動きがあった。 カーギル家も然り。

当然、私は父から命を受ける。

そんな貴族達の動きを察した神官長は、神殿に圧力がかけられないように、貴族達の情報を常に求めていた。

神官長は、侯爵家出身の私を利用するつもりで、神殿に雇ったのだ。

いつの間にか、2重スパイとなっていた。



神官長には、多少の恩は感じている。

だが、その程度の気持ちだ。

目を瞑っていたのは、生きる事に、疲れて━━
自暴自棄になっていたと言っても過言ではない。

だが、もう一度、昔のように、正しいこと、正義への信念を貫いてみようと思う。


生きる活力が沸いたのは、マリーベル様。

あなたに出会えたからです。


純粋なあなたの心に触れて、目が覚めました。

あなたに恥じる生き方はしたくない。

不正の証拠は、この書類が鍵となるでしょう。

必要なら、私の証言も。


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