婚約者候補は辞退させてくださいませっ!

30

今日はマリーベルが私に会いに来る。

まさかこんな日が訪れるとは。

あぁ早く会いたい…
可愛いマリーベル。

神殿へ向かった時は胸が張り裂けそうだった。

気分が浮かれていたのは一瞬だった。

なんということだ…


「失礼致します。アーサー様ミシェルです。ローガンよりこちらにいらっしゃると伺って…どうされましたの?」

「あぁ、ミシェルか…どうもこうもない。見ての通りだ。」

私は机にうつ伏せていた。

「ふふふ。まさか失恋でもなさったの?」


机から起き上がると気になっていたことを問いかける。

「そうだ、ミシェル。そなたはマリーベルに会いに行くと言っていたな。一体何を言ったのだ?マリーベルから、そなたと幸せに などと言われたではないか!」


ミシェルは悪びれた様子もなく平然としていた。

「ふふふ。あら、マリーベルさまが。そうなんですの?
私はただ、アーサー様の婚約者に相応しいのは私とあなたとどちらかしら?とお尋ねしましたの。」

「はぁ?なんだと!おかげで誤解されたではないか」

「アーサー様。マリーベル様のお気持ちをお知りになりたかったのではなくて?
この質問をされてマリーベルさまが嫉妬なさらなかったのなら、大人しく現実を受け止められてはいかが。女々しいとますます嫌われますわよ。ふふふ」

この私が失恋だと?認められるか。

「それに、私の目からみて、お兄様と一緒にいらっしゃるマリーベル様はとても幸せそうに見えましたわ」

「ぐぬぬっ。ニコライ…
ニコライに…私は負けたのか」

「アーサー様。そうそう。私に借りを返してくださいませ」

「借りだと?
あぁ、そういえばそう言う約束だったな。」


「それに、アーサー様にとってもマリーベル様の好感度を上げる機会になると思いますわ」


「それは本当だろうな?」

「こちらを後でご覧になられてください。神殿の不正の証拠です。」

私は書類を受け取った。
「よく手に入ったな。分かった。
後で確認しよう。出所は信用できるのか?」

「ええ。アーサー様。
証言に協力する代わりに、その方の罪を問わないでくださいませ」

ミシェルは真っ直ぐに見つめて頭を下げた。あのミシェルが私に頭を下げるなど珍しい。

「不正に加担している者を見過ごせと?」

「どうか、アーサー様の先見の明により聡明なご判断を」


「約束はできないが考慮しよう」


ミシェルは静かに退室した。

この書類は…

そう言うことか。

はぁ…ミシェルめ、しおらしく私をおだてていたが……

私は、聡明なのか?
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