婚約者候補は辞退させてくださいませっ!
「地獄に落ちる時は道連れにするからな!そ、そうか!マリーベル嬢……その手があった。ポーター侯爵、実はなロゼア国がこのレーニア王国と同盟を結びたいという意向を示している。今まで敵対関係にあったロゼア国と友好な関係を築くチャンスさ。
我らの功績にするのだ!

友好の証としてあの国の第二王子のユーリ殿下が、この国で妃を探しているらしい。そこで、マリーベル嬢を差し出すのさ。」


「お前、バカと思っていたが、死に急ぎたいのか?」

「まぁ、聞け。マリーベル嬢を我々で攫ってユーリ殿下に差し出すのさ。あくまでも、マリーベル嬢自らの意志で向かったと見せかけてな。


あのアーサー殿下は必死に取り戻しに向かうだろう。そこに我々も同行するのさ。私がユーリ殿下に話はつける。

そして、我々の交渉のおかげでマリーベル嬢は無事に連れ戻せる。

しかし、仮にも婚約者候補のマリーベル嬢が他国の王子の元へと向かったんだ。本人が何もなかったと証言したとしても、世間では疑うだろうよ。手を出されたのではないかと。傷ものだと。


そんな醜聞が広まれば王家とて婚約者とは認めることができないさ。

そこで、我々の娘達の出番さ。どちらかはアーサー殿下の婚約者に、そしてもう一人はロゼア国の妃に。なぁ、悪い話ではないだろう?

マリーベル嬢のことで、アーサー殿下は我々の罪のことなど頭の片隅にものこらないだろうよ。」


「だが、あのアーサー殿下がマリーベル嬢をあきらめるだろうか?それに、敵対しているロゼア国へレイチェルを嫁がせることはできない。」

「ロゼア国も変わりつつある。王族と縁ができるんだ。喜んで我が娘ジャクリーンを差し出すさ。そのために金をかけてきたんだ。」

「決まりだな。あの王子の鼻っばしらをへしおってやろうではないか。ロブソン侯爵」

「ふはは、楽しみだな、ポーター侯爵」

二人の高笑いがしばらく室内に充満していた。
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