婚約者候補は辞退させてくださいませっ!

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✳︎✳︎✳︎

「マリーベル、こちらにいらしたのですね。部屋にいないから心配しました。」


「ニコライ様、ひゃっ、な、な、な、何をなさるのですか」


ニコライは神殿の中庭に佇むマリーベルへ近づくと、頬にちゅっと口づける。

「ふふ、軽い挨拶ですよ。それとも、そのかわいい唇が良かったですか」

ニコライに触れられた頬に手を添え、真っ赤になりながらマリーベルは後退る。


「いえ、大丈夫です。」

「ふふ、そうですか、大丈夫なのですね。」

「ニコライ様、大丈夫というのは、そういう意味ではなくてっ!」


ジタバタとニコライから逃れようするマリーベルを、そうさせまいとニコライは腕の中に閉じ込める。

「あ、あ、あの、ニコライ様、エドワードとフレッドも見ています!」

「ふふ、構いませんよ、照れた顔もかわいいですね、私のマリーベル」

「も、も、もう無理です。ニコライ様」

エドワードとフレッドは周囲を警戒しながら、二人から視線を逸らす。空気の一部となろうと努力していた。

神殿の捕物騒ぎの後始末が落ち着くまで、マリーベルの護衛としてこうして常に側に控えている。

事後処理が落ち着いたら早急に王宮へ帰ってもらおうとニコライは思っている。二人に恨みはないが、アーサー殿下の息のかかった者達が愛しいマリーベルの側にいるだけで不快だ。

自信の腕の中に囲い込んでいるマリーベルの額にそっと口づけを落とす。

「もう、ニコライ様、恥ずかしいですっ」

ニコライに求婚されてから、マリーベルは毎日顔を赤らめてばかりだ。

ニコライ様はいったいどうしたのかしら。
毎日、可愛いだの大好きですなど、甘い言葉をかけてくれる。それに加えて、距離も近い。挨拶と称して手や頬などに触れられれることも多い。 

突然ぎゅうっと抱きしめられたりすることもあって、私の心臓が持ちません。

何度も訴えるのだけれど、「お嫌ですか?」とまるで子犬がしょんぼりしたような仕草をされてしまう。あんなお姿を見たら、断れません。

ニコライ様の綺麗な空を思わせるようなスカイブルーの瞳。これからもずっとその瞳の中に私だけを映してほしくて、物欲しげに見つめてしまう。


すると決まってニコライ様は私の唇を奪う。私も嬉しくて求めてしまう。

こんなに幸せでいいのかしら。
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