婚約者候補は辞退させてくださいませっ!

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お互い隙がなく、しばらく無言で対峙する。

先手を切ったのは、アーサーだった。

「ニコライ!」

アーサーの放つ切先を表情一つ変えずにニコライは受け止める。


「アーサー殿下と言えども、手加減は致しません!」

二人の力は拮抗していた。

どちらかが切り込んでも、相手が防御し、振り払う。カキンカキンと剣の擦れ合う音が響いていく。


「ニコライ!お前なんかにマリーベルを渡すものか!身分に関しても全てにおいて私の方が勝っている」

「随分な差別発言ですね、身分に関しては確かにそうかもしれません。

ですが、あなたといてマリーベルが幸せになれるとは思えません!

例え身分があっても、窮屈な生活を強いらせることになる。

私ならマリーベルの望みに耳を傾けることができます。

誰よりもマリーベルの気持ちを優先するからです。

貴方は今までマリーベルの何を見てきたのですか? 怯えている姿だけではないのですか?私なら怖がらせたりしない!」


「私は怖がらせてなど──」


「そこまでです!」


「っ!」

動揺したアーサーにニコライは素早く詰め寄り、アーサーの剣をその手から振り落とした。

喉元に剣先を突きつけるニコライの瞳には、いまだ怒りの灯火が見える。

「──私の……負けだ……」

アーサーは苦悶の表情を浮かべながら、降参した。

「マリーベル……」


切なげな表情でマリーベルを見つめるアーサーから隠すように、ニコライはマリーベルの前に立つ。


「約束です。お引き取りを」

「分かった。皆、撤収だ。」

アーサーは項垂れた様子で騎士達と共に退室した。

アーサー様はどうして哀しそうな顔をしているの?

眉間に皺をよせていないアーサーを見たことに驚いたマリーベル。

まるで、私のことを大切に想っているのではないかと、勘違いしてしまいそうになる。


「そんなに他の男性を見つめるなんて、妬けますね、マリーベル、私を煽ってあるのですか?」

アーサーの後ろ姿を呆然と見送るマリーベルを、ニコライは抱き上げる。




「ニコライ様、そ、そんな、煽ってなど……。あぁ、ニコライ様ご無事で良かったです!」


マリーベルはニコライの首に手を回して、力の限り抱きつく。









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