婚約者候補は辞退させてくださいませっ!
✳︎✳︎✳︎
鐘の音を止めるべくエレナは階段を駆け上がっていた。
しばらく登っていくと、男性の後ろ姿を捉える。
その男性の背後に素早く追いついて、エレナは声をかけた。
「また、あなたですか?
お嬢様の周辺をウロつくのはお辞めください。
お嬢様を煩わせないでください。いい加減、諦めるようにするのもあなたの役目では?」
階段を登っていたビルは、エレナの声を聞きゆっくりと振り向く。
「おやおや、もしかして私に話しかけているのですか? あなたに犬呼ばわりされた私に? 今日は人間扱いしてくださるのですか?
アーサー様は潔く身を引き、本日はお忍びでお祝いに来られているのです。アーサー様に対して失礼な発言は見過ごせませんね」
「あれのどこが潔くですか。とにかく──」
「エレナ嬢、ターナー男爵家の次女。
幼い頃より兄と共に護身術を習う。
学園での成績はクラスではトップ、学年では5番前後。料理や刺繍などの腕前も上々。
マリーベル様の望まれることならば、命も惜しまない。
我々を見ても怯まない姿勢、中々です。
それなりの度胸と忠誠心があると言ったところでしょうか。」
「調べたのですか?」
「最近、とある家との縁談の話があるとか。侍女を辞めるのですか?」
「私は一生お嬢様にお仕えすると決めています!というか、関係ないでしょう、あなたには」
「えぇ、犬呼ばわりされた私には関係ないことですが、一つ提案がありして。マリーベル様の側に一生仕えることのできる提案を」
「根に持つ男は嫌われますよ。」
「はは、それは困りますね、これでも私はモテるのですが。私とパートナーになるのはどうですか? 煩わしい縁談の話もなくなります。
一生働きたいというのなら自由に。」
「ふざけてるのですか?そもそも身分が違いすぎます。」
「それなりに根回しくらいできます。どうです?悪い話ではないと思いますが。
我々が警備しているにも関わらず、計画性もなく勢いで忍び込もうとする姿は、見ていてちょっと心配になりましてね。
少し調べさせていただきました。
お淑やかな姉とお転婆な妹。姉ではなく兄につきまとう姿に、家族も頭を抱えていたようですね。
ですが、行儀見習いとしてマリーベル様の侍女になってからは、落ち着いた──というかマリーベル様の噂にかき消されたのでしょう。」
「ディスってるのですか? 私、それなりに強いですけど、叩かれたいのですか?」
「いえ、その、これでも一応、口説いてるつもりです」
「は?口説いてる?私をですか?」
「──えぇ、まぁ」
「変わった方ですね。考えておきます。そんな義務的な口調で告白なんて……モテるのは嘘でしょう?」
「まぁ、遠からず近からず……黙っているとモテますけどね。
なるべく返事は早くいただけると助かります」
「でしょうね、それよりも、早くあの鐘を止めてください」
「止めてくるので、あなたの隣の席は空けておいてください。続きは後ほど」
「お嬢様の晴れ舞台なんですから、急いで! それと、名前は存じてますけど、まずは自己紹介からするのが普通でしょう? 後でいいです!とにかく!急いで!」
「自己紹介からですか? そういうこと飛ばして結婚するのはどうですか?」
「ビル様! 二度と口聞きませんよ」
「やれやれ、仕方ないですね。今回ばかりは主の行動を恨みます」
ビルは迅速に階段を駆け上がって行った。
鐘の音を止めるべくエレナは階段を駆け上がっていた。
しばらく登っていくと、男性の後ろ姿を捉える。
その男性の背後に素早く追いついて、エレナは声をかけた。
「また、あなたですか?
お嬢様の周辺をウロつくのはお辞めください。
お嬢様を煩わせないでください。いい加減、諦めるようにするのもあなたの役目では?」
階段を登っていたビルは、エレナの声を聞きゆっくりと振り向く。
「おやおや、もしかして私に話しかけているのですか? あなたに犬呼ばわりされた私に? 今日は人間扱いしてくださるのですか?
アーサー様は潔く身を引き、本日はお忍びでお祝いに来られているのです。アーサー様に対して失礼な発言は見過ごせませんね」
「あれのどこが潔くですか。とにかく──」
「エレナ嬢、ターナー男爵家の次女。
幼い頃より兄と共に護身術を習う。
学園での成績はクラスではトップ、学年では5番前後。料理や刺繍などの腕前も上々。
マリーベル様の望まれることならば、命も惜しまない。
我々を見ても怯まない姿勢、中々です。
それなりの度胸と忠誠心があると言ったところでしょうか。」
「調べたのですか?」
「最近、とある家との縁談の話があるとか。侍女を辞めるのですか?」
「私は一生お嬢様にお仕えすると決めています!というか、関係ないでしょう、あなたには」
「えぇ、犬呼ばわりされた私には関係ないことですが、一つ提案がありして。マリーベル様の側に一生仕えることのできる提案を」
「根に持つ男は嫌われますよ。」
「はは、それは困りますね、これでも私はモテるのですが。私とパートナーになるのはどうですか? 煩わしい縁談の話もなくなります。
一生働きたいというのなら自由に。」
「ふざけてるのですか?そもそも身分が違いすぎます。」
「それなりに根回しくらいできます。どうです?悪い話ではないと思いますが。
我々が警備しているにも関わらず、計画性もなく勢いで忍び込もうとする姿は、見ていてちょっと心配になりましてね。
少し調べさせていただきました。
お淑やかな姉とお転婆な妹。姉ではなく兄につきまとう姿に、家族も頭を抱えていたようですね。
ですが、行儀見習いとしてマリーベル様の侍女になってからは、落ち着いた──というかマリーベル様の噂にかき消されたのでしょう。」
「ディスってるのですか? 私、それなりに強いですけど、叩かれたいのですか?」
「いえ、その、これでも一応、口説いてるつもりです」
「は?口説いてる?私をですか?」
「──えぇ、まぁ」
「変わった方ですね。考えておきます。そんな義務的な口調で告白なんて……モテるのは嘘でしょう?」
「まぁ、遠からず近からず……黙っているとモテますけどね。
なるべく返事は早くいただけると助かります」
「でしょうね、それよりも、早くあの鐘を止めてください」
「止めてくるので、あなたの隣の席は空けておいてください。続きは後ほど」
「お嬢様の晴れ舞台なんですから、急いで! それと、名前は存じてますけど、まずは自己紹介からするのが普通でしょう? 後でいいです!とにかく!急いで!」
「自己紹介からですか? そういうこと飛ばして結婚するのはどうですか?」
「ビル様! 二度と口聞きませんよ」
「やれやれ、仕方ないですね。今回ばかりは主の行動を恨みます」
ビルは迅速に階段を駆け上がって行った。