狐の婿殿と鬼嫁様
3
私(ミア)は闇や暗黒を恐れない。
夜や暗がりという意味でも、世の中の事柄の暗喩としても。
だって「鬼」とは本来はそういうものだからだ。
(何が「光を怖がるような人間になりたくない」よ。あなただって、光は怖がらなくても、闇は恐れて嫌っているじゃない)
過去の脱走のときに私の誘いを断った男の子(セロ)は、そんな言い草で拒否して否定した。ラロも私のために殺されてしまったが、セロは私を拒否したくせに助けて逃がそうとラロと一緒に追っ手と戦ってくれた(セロは自分自身には逃げ出す意思がなかったにも関わらず)。
今でも、二人とも手に入れたのか、二人とも失ったのか、わからない気がする。「失った」のはとても悲しくて憎たらしいが、私のために命までかけてくれたことで、「愛された」満足感が残っていて納得できている。毎月にラロが殺された日になると、特別な気持ちになってしまう(感謝と感動や愛が溢れてきて、心の空虚が埋められていくようで、たまに泣いてしまう)。幸いに、セロはまだ生きているのだが、考え方が違いすぎて、敵になっている(それでもセロの存在は楽しみを与えてくれるし、いつか自分の手で殺したい。食べたい)。
私は脱出してからは「酵素剤」が手に入らないから、かわりに人間を襲って食べていた。そのせいでアレルギー体質のようになって、日の光の下では疲労が早くて重い。だがその分、パワーそのものは上がっているようだし、闇夜では昼間より強い力をふるえる。
これが本当・本来の「鬼」なのだ。
夜気を呼吸しながら、真実に生きている充実感がみなぎってくるようだった。
はるかな昔に、天然で自然発生した上位種族の新人類(ミュータント)としての「鬼」が存在していた。彼らは多数派の人間から疎まれ憎まれてほとんど絶滅する寸前にまで追い込まれていった。
けれど、神様とやらの意志なのか、歴史やら生物進化の必然なのかは知らないけれども、急激に人類から進化や分派したミュータントやエスパーが増え出す時代がやってきたのだ。
すると、怯えてどうしようもなくなった人間たちは、物わかりの良いエスパーをかき集めたり生体サイボーグを造って、応戦や鎮圧しはじめた。それだけでは戦力が足りなくて、人工的に「味方のミュータント」まで作り始め、かつて破滅させた「古代鬼」の遺伝子まで利用して復刻版を造った。
私は「道具として造られた鬼」。
命と人生を最初からオモチャにされるために生まれてきたのだ。
許せないし、受け入れがたかった。
私は私だ。私は鬼だ。
たとえ最後のオリジナル(古代鬼)の変造コピーの一人なのだとしても、真実の本物の鬼になってやる。かつての古代鬼の正統な遺伝子を受け継いでいるのに、どうして偽りの人生を受け入れられるものか。
私(ミア)は闇や暗黒を恐れない。
夜や暗がりという意味でも、世の中の事柄の暗喩としても。
だって「鬼」とは本来はそういうものだからだ。
(何が「光を怖がるような人間になりたくない」よ。あなただって、光は怖がらなくても、闇は恐れて嫌っているじゃない)
過去の脱走のときに私の誘いを断った男の子(セロ)は、そんな言い草で拒否して否定した。ラロも私のために殺されてしまったが、セロは私を拒否したくせに助けて逃がそうとラロと一緒に追っ手と戦ってくれた(セロは自分自身には逃げ出す意思がなかったにも関わらず)。
今でも、二人とも手に入れたのか、二人とも失ったのか、わからない気がする。「失った」のはとても悲しくて憎たらしいが、私のために命までかけてくれたことで、「愛された」満足感が残っていて納得できている。毎月にラロが殺された日になると、特別な気持ちになってしまう(感謝と感動や愛が溢れてきて、心の空虚が埋められていくようで、たまに泣いてしまう)。幸いに、セロはまだ生きているのだが、考え方が違いすぎて、敵になっている(それでもセロの存在は楽しみを与えてくれるし、いつか自分の手で殺したい。食べたい)。
私は脱出してからは「酵素剤」が手に入らないから、かわりに人間を襲って食べていた。そのせいでアレルギー体質のようになって、日の光の下では疲労が早くて重い。だがその分、パワーそのものは上がっているようだし、闇夜では昼間より強い力をふるえる。
これが本当・本来の「鬼」なのだ。
夜気を呼吸しながら、真実に生きている充実感がみなぎってくるようだった。
はるかな昔に、天然で自然発生した上位種族の新人類(ミュータント)としての「鬼」が存在していた。彼らは多数派の人間から疎まれ憎まれてほとんど絶滅する寸前にまで追い込まれていった。
けれど、神様とやらの意志なのか、歴史やら生物進化の必然なのかは知らないけれども、急激に人類から進化や分派したミュータントやエスパーが増え出す時代がやってきたのだ。
すると、怯えてどうしようもなくなった人間たちは、物わかりの良いエスパーをかき集めたり生体サイボーグを造って、応戦や鎮圧しはじめた。それだけでは戦力が足りなくて、人工的に「味方のミュータント」まで作り始め、かつて破滅させた「古代鬼」の遺伝子まで利用して復刻版を造った。
私は「道具として造られた鬼」。
命と人生を最初からオモチャにされるために生まれてきたのだ。
許せないし、受け入れがたかった。
私は私だ。私は鬼だ。
たとえ最後のオリジナル(古代鬼)の変造コピーの一人なのだとしても、真実の本物の鬼になってやる。かつての古代鬼の正統な遺伝子を受け継いでいるのに、どうして偽りの人生を受け入れられるものか。