狐の婿殿と鬼嫁様
3
「バーベキューのお誘い? アルバイト?」

 耳を疑った私(佳蓮)はほっこり顔の姉・夕梨花に問い返した。

「あの鬼の子供らや青たちと?」

「そうなの」

 姉は切り替えが早いのか、誤解がとけたからなのか、それとも気になる「彼」のことも念頭にあるというのか、ずいぶんと楽しげだ。
 あの間違って姉を襲った鬼の子供らの育成施設と、青の「狐」グループの両方からお誘いの電話があったそうだ(家の電話にかかってきて、母が要件を聞いて、部屋にいた姉を呼んだらしい)。合同でピクニックとバーベキューをやるから、遊びに来て手伝わないかという。
 考えてもみれば、政府側の人造エリートということで、本来からは味方同士なのだからつきあいもあって変ではない。それで「狐」グループの関係者(の家族である夕梨花)を襲撃したことで、狐側が彼ら鬼の施設に詳細を問い合わせたのがきっかけなのだという。悪意を持ってやったのでなく本当に偶然の事故だった説明がなされて、親睦と様子見も兼ねているようだ。

「お詫びと親睦。もし機会があったらどっちかか両方の施設で保育とか学校のアルバイトとかもするかも」

「それって、やっぱりリクルートのスカウトも兼ねてない? お姉ちゃんって「霊媒」のサイキックだし、大学も小学校教師の課程だし」

 私としてはピンときたのだけれど、それでも自分に声がかからなかったのは、蚊帳の外にされたようで内心にむくれてしまう。望まれる人材としての価値は低いだろうし、事件の当事者になったわけでもないが、とっくに青の婚約者なのに。
 それで「一緒に行っていいか」と切り出そうかどうかを迷う。青に連絡しておけば、彼が出席して様子をうかがって姉を守ってくれるだろうが、なんだか釈然としない。青一人に姉を任せるのも、自分だけ外されるのも嫌だったが、無理に押しかけて良いものやら? 青の婚約者ペアでついていく分には構わなさそうだけれど、ひょっとして高度な応酬になったときに、未熟で凡人ゆえに邪魔になるかもしれない。
 ひとまず、姉より先に青に相談しようと携帯電話に手を伸ばしたとき、青からお誘いの電話がかかってきた。
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