お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです

 うまく話を合わせてくれはしたけれど、後で問い詰められるのは間違いなかった。



 案の定、藍斗さんは帰り道の途中で私と話す時間を取った。

 実家から充分離れた場所で、わざわざ会話に集中できるよう車を止めて、だ。

「どういうことか説明してもらおうか」

 逃げ場のない車内で追い込まれ、ひたすら縮み上がる。

「話す必要はないと思って……」

「実家に借金があるなら、普通は結婚前に話すものだろう。さっきご両親の前で言ったように、ふたりですり合わせる話だからな」

 ぐうの音も出ないほどの正論だ。

 だけど問題は、この結婚がはたして〝普通〟のものなのかという点だった。

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