お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
「どう触れればお前が啼(な)くのか、知っていいのは俺だけだ」

「――っ」

 噛みつくようなキスはさっきよりも激しく私を翻弄する。

 キスの合間に何度も『嫌だ』と言った気がした。

 でも、掴まれていないほうの手は懸命に藍斗さんにすがりついて、優しいキスをねだろうとしている。

「あい、と……さん……」

 震える声で呼ぶと、首筋に噛みつかれた。

 藍斗さんは息を呑んだ私にかまわず、そのままきつく吸い上げて痕を残す。

「い……痛いです……痛い……やだ……」

「痛いだけか? 違うだろう」

 私の本心を見透かした声は、腰が砕けるほど甘く意地悪だった。

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