お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 彼の唇が肌に触れた瞬間、たしかに私の喉の奥からは歓喜の声が漏れた。

 痕をつける際の鮮烈な痛みさえ、身体に熱を生む甘い刺激に変わっている。

「言ったはずだ。お前の身体のことは俺が一番よく知っている」

「あ、っう」

 力の抜けた身体を抱き上げられ、抵抗も許されないまま運ばれる。

 藍斗さんが迷いなく階段を上がるのを見て、どこへ向かうつもりなのか理解した。



 寝室にたどり着いた藍斗さんは、私をベッドに押し倒すとすぐに覆いかぶさった。

 片手でやすやすと両手首を掴み、私の頭上にまとめ上げてしまう。

「あ、あ……藍斗さん、やだ……お願い……」

「黙っていろ」

「ん、く」

< 111 / 271 >

この作品をシェア

pagetop