お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 求められたい、優しくしてほしい、甘えさせてほしい。

 そう思う以上に、こんな形で奪われたくはないと叫んでいる。

 藍斗さんの手が私の服をまくり上げ、そのまま下着をずらそうとした。

 その瞬間、ひくりと喉が鳴る。

「ひ、ぅ……うっ……」

 藍斗さんの手が止まった。

 だけど、一度こぼれた涙は止まらない。

 今も好きだから、こんな形でなく昔のように愛し合いたかった。

「う……ぁ……うぅ……っ……」

「……円香?」

 はっとしたように藍斗さんが私の乱れていた服をもとに戻した。

 ずっと掴まれていた手も解放され、くしゃくしゃになった髪を撫でられる。

「円香、すまない」

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