お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 八年経って彼女も俺の金を目当てにするようになったのかという失望。それが彼女の実家に行って間違いだったと知った喜び。

 そして、借金のために男に身体を売っていたと知った絶望。

 一気にいろんな感情に支配された結果、ただ強く許せないという気持ちだけが残った。

 俺と別れて以来、恋愛経験がないと言ったのを聞いて、ゆがんだ喜びを覚えたのが始まりだっただろうか。

 彼女が知る男は俺だけなのだと、安堵と同時に震えるほどうれしくなった。

 あの甘い声も、とろけた顔も、必死にすがる腕のぬくもりも、快感にむせぶ涙の一滴に至るまで、すべて俺だけのものだと思ったのに。

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