お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 それが誤りかもしれないと知った瞬間、激しい暗い感情が芽生えて止まらなくなった。

 その結果がこれだ。

 距離を開けたまま円香の顔を覗き込むと、首筋に痛々しい赤い痕がいくつも残っている。

 しばらく彼女は外に出られないだろう。タートルネックの服を着ればまだいいかもしれないが、少なくとも人前に晒せる身体ではない。

 それに、手首にも指の跡が残っていた。これも俺がつけたものだ。

 見知らぬ男には身体を許すくせに俺のことは拒むのかと、逃げられないように押さえつけたせいだ。

 こんなつもりではなかった。

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