お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 それを『もう好きになるなという意味か』と尋ねられ、虚を突かれたのはたしかだ。

 すぐに、好きにならずにいることも可能だという意味に気づき、堪らなくなって強がってしまった。

 自分の考えが間違いだったと、俺を愛さずにいるのは不可能だとわからせたくて、あえて『好きになるな』と告げた。

 小さい男だ、と思い返しては何度自分に呆れたかわからない。

 それでも一度言ったせいで引けなくなり、わざとベッドを用意しないで俺を意識させようとした。

 今日に至るまで望んだ結果は得られていないが、これも時間をかけて彼女の心をほどいていけばいつかきっと、と思っていたのにこの体(てい)たらくだ。

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