お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 落ち着いた後も背中を撫で、包み込むように抱き締めたままじっと動かずに待つ。

 明日の朝、円香が目覚めるまでこうしていたらまた泣かせてしまうだろうか。

 本当はずっと、こうやって抱き締めて眠りたかった。

 かつてそうしたように、俺の腕の中で甘える彼女の寝顔を見て眠りたかったのに。

 やはり、もう一度やり直したいと思うなんて間違っていたのだろうか。

 こんなゆがんだ執着心の塊になった男に求められても怖いだけだろう。

 それになにより、円香は俺に愛想を尽かして別れを告げたのだ。

『あなたが一番よくわかってるはずだよ』

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