お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 そういうわけで帰宅した頃には日付が変わる直前になっており、玄関に入ってすぐ、冷たい目の藍斗さんに見下ろされる羽目になったのだった。

「こんな時間までどこでなにをしていたんだ」

 怒っているように感じて、ぎゅっと身体を縮こまらせながら下を向く。

「取引先と飲み会で……」

「ひと言連絡するくらいできなかったのか。何時だと思っている」

「ごめんなさい……」

「……俺の妻としてふさわしくない行動はするな」

 藍斗さんの怒りはもっともだ。

 だから失望したように背を向けられても、なにも言えない。

 藍斗さんが部屋に向かった後、リビングのソファに座って息を吐いた。

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