お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 私はとても嫌な女だ。

 さっき藍斗さんに叱られて、『少しは心配してくれたかな』と無意識に思ってしまった。

 いくら酒が入っているとはいえ、そんなふうに考えていいはずがない。

「……最低だ」

 彼といると、自分に嫌気が差してばかりだ。

 苦々しくつぶやいてソファの背にもたれ、目を閉じて呼吸を繰り返す。

 藍斗さんとちゃんと会話をしたのも久し振りな気がした。

 それがこんな説教だなんて、情けないにもほどがある――。



◇ ◇ ◇



 階段を下りて一階に向かうと、まだ明かりがついていた。

 円香が消し忘れたのだろうかと思ってリビングに足を運ぶ。

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