お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 彼女はソファにもたれ、ぐっすりと眠っていた。

 帰ってきた時と同じ格好どころか、まだ仕事用のバッグを持ったままだ。

 俺が部屋に行った後、すぐにここで寝落ちてしまったのではないかと思われる。

「こんなところで寝るな。風邪を引くぞ」

 そう呼びかけるも、円香が目を覚ます気配はない。

 少しだけその顔が悲しそうに見えて、やはり先ほど帰宅した彼女に向けた言葉は間違っていたかもしれないと反省した。

 今日は普段より遅い時間に帰ってきたのに、それでも彼女はまだ家にいなかった。

 円香も残業が長引いているのかと焦れた思いで待ち続け、日付の変更が近づくにつれ不安でいっぱいになった。

< 131 / 271 >

この作品をシェア

pagetop