お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 酒のせいでいつもよい熱い肌を意識しないよう、その身体の甘やかなやわらかさを意識しないよう、理性を総動員して二階まで運ぶ。

 いっそ一階にも寝室を作ろうかと思うが、そうなったらきっと今唯一顔を合わせる場となっているベッドも別々に使うことになるだろう。

 こうして彼女をベッドに運ぶのは先日以来だと、苦い気持ちになりながらシーツの上に優しく下ろした。

 いつの間にか服をぎゅっと掴まれていて、すぐには引きはがせない。

 頼むからそんなふうに甘えてこないでほしいと心の中で訴え、指を一本ずつほどいて手を離した。

むにゃむにゃと円香の唇が動き、キスを乞うように薄く開かれる。

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