お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 その甘い唇を望むだけ堪能したい欲求が芽生えるも、目を逸らして耐えた。



◇ ◇ ◇



 翌日、私は仕事を終えてすぐ帰宅した。

 しばらく藍斗さんと距離のある生活を送っていたけれど、彼が帰ってくるなり玄関に向かう。

「おかえりなさい」

「……ただいま」

 私に出迎えられると思っていなかったのか、藍斗さんが訝しげな顔をした。

 申し訳程度に挨拶を返されるも、それで済ませて部屋へ向かおうとする。

「昨日、ベッドまで運んでくれてありがとう」

 廊下を歩く背中に話しかけると、藍斗さんが足を止めた。

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