お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです

 ずっと冷たかった藍斗さんが私を信頼していると言ってくれた。

 それだけで舞い上がりそうになるも、藍斗さんは苦い顔をしている。

「パーティーに参加するからには、エスコートの必要が出てくる。もし俺に触れられるのが嫌なら、今のうちに言ってくれ」

「……大丈夫。別に嫌じゃない」

 まだ先日の件を気にしているのだろうか。

 いきなり迫られた件は驚いたけれど、あれ以来彼は距離を取っているし、私も既に整理がついている。

 むしろ今は、避けられているのを寂しく思っているくらいだ。

「この間のことならもう気にしないで。その……疲れていると頭が回らなくなったりするよね」

< 139 / 271 >

この作品をシェア

pagetop