お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 だけどきっと藍斗さんには迷惑だろう。それでも、『妻らしい振る舞いをするために必要だから』と自分に言い聞かせて可能な限りすり寄る。

 昔の彼なら、くっつきすぎだと笑ってくれたかもしれない。

 今は私を見ようともせず、極力触れる場所が少なくなるように僅かに身を引いている。

 切なくなりながらも、さっそくパーティーで情報収集にあたった。

 ここは友だちを作る場ではない。自分の事業に必要な相手を探し出し、笑顔で腹の底を探り合って商談に持ち込む戦場である。

 積極的に話しかけてくる人もいればそうでない人もいる中、挨拶を交わしつつ藍斗さんにこっそり尋ねた。

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