冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
「ご、ごめんなさい。ちょっとはしたなかったね。喉が渇いてたみたいで」

「……そう思っていたなら先に言ってくれ」

 呆れられたかと思うも、藍斗さんは自分が持っていたグラスと空になったグラスを交換した。

「俺の分も飲んでいい。ただし飲みすぎるなよ」

「……うん、ありがとう」

 断ることもできたけれど、純粋にその親切がうれしくてお礼を言う。

 藍斗さんの唇が触れたグラスだと思うと、小気味よく弾ける泡と同じように胸の奥がぱちぱちした。

 我ながら間接キスを意識するなんて、と思いながら、今度は大事に飲む。

 さっき飲んだものよりもっと甘い気がした。

「少し表情が和らいだな」

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