冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 藍斗さんの手を引き寄せ、自分から頬に押し当てたのだって、普段の私ならきっとしない。

「触って」

 藍斗さんの手のひらを自分の頬に押しつけながら、戸惑いを瞳に浮かべた彼に言い放つ。

「いつまでも気にしてるから私を避けるの? いくらそういう結婚だからって、露骨に線を引かれるのは悲しいよ」

「違う、円香。そういうつもりじゃ」

「私も触っていい?」

 ぎょっと藍斗さんが身を引いたのがわかった。

 残念ながら手は私が掴んでいるけれど。

「もう酔ったのか? さすがに早い」

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