冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
「触りたかったの。昔より痩せたよね? あの頃よりいいものを食べてると思ってるけど、ちゃんとお腹いっぱいになってる?」

「おい」

 大事に飲もうと思っていたのも忘れ、グラスの中身を一気に飲み干した。

 藍斗さんが持っていたグラスと一緒に、すれ違ったスタッフに渡して両方の手を彼の頬に触れさせる。

 思った通り、以前より少し肉が落ちた気がする。

 前だって別にふくよかではなかったけれど、今はよりシャープになった印象だ。

「円香」

「触られたくないなら、屈まないで」

 なにげなく言ってから、たしかに彼はわざわざ私が触れやすいよう顔を寄せてくれているらしいと気がついた。

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