冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
「見ればわかる。……本当に酔っているんだな」

 藍斗さんの手をほどいてベンチに座り、隣をぽんぽんと手で叩く。

「藍斗さんも座ろう。ちょっと休憩」

「ふたりで座るには狭いだろう」

「もうちょっとこっちに寄ろうか。そうしたら場所が――」

「危ない」

 ギリギリまで端に行こうとしたら、滑り落ちそうになってしまった。

 その前に藍斗さんが私の腰に腕を回し、ひっくり返らないように抱き寄せてくれる。

「いっそ膝にでものせたほうが早そうだ」

「のる?」

「……だめだ」

 きっとこのベンチは庭園の飾りのようなものなのだろう。

 ひとりで座るには余裕があるけれど、ふたりで座るには狭い。
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