冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
「長い付き合いなんだね。それで?」

「他人に夢を与えるのは楽しい仕事かもしれないと思った」

 口もとに笑みを浮かべて話す藍斗さんに見とれる。

 笑っていると、普段の冷たい印象が薄れた。

「あの頃、志信は進路について悩んでいてな。そこでなにか見出したらしい」

「でも水無月社長はホテルの経営者にならなかったよね。どうして?」

「俺が先になると言ったからな」

「早い者勝ちで決めたんだ」

 くすくす笑うと、藍斗さんが顔を寄せてきた。

「きっかけはあれだった。だが、どうせなら頂点を目指そうと思ったのはお前が理由だ」

「私?」

「『世界一のホテル王になって』と言っただろう?」

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