冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 八年前の想いが残っていることを知らずに済んだし、彼の妻として生活することもなかった。

「でも、会えてよかった」

 どんなに切ない日々で、彼を愛してはいけない決まりを強いられても、こうしてそばにいられるだけでうれしい。

 心の底から自分を馬鹿だと思う。藍斗さんにはほかに好きな人がいて、私は一番じゃなかったのに、それでも彼がいい。

「……俺もだ」

 藍斗さんがつぶやくように言って、私の輪郭に指を滑らせた。

 顎の先を掴まれ、顔を持ち上げられる。

「あの日、招待客の中からお前を見つけられてよかった。声をかけようと思って、本当によかった」

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