冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 藍斗さんに背を向けると、痛いほど視線を感じた。

 たしかに私は自分勝手だ。

 勝手に甘えて、勝手に拒んだ。もっと彼といたいくせに、自分の心に嘘をついている。

「線を引かれたら悲しい、って言ったのはなかったことにして」

 背後で藍斗さんが立ち上がった気配がした。

「優しくされたらきっと、またあなたを好きになっちゃう。それは困るでしょ?」

「なればいい」

 声が近い、と思った時にはもう、後ろから抱き締められていた。

「好きになればいい。お前が俺に惹かれるのを止めるつもりはない」

「……嫌だ」

 彼の腕を振りほどけないくせに、その言葉を拒んで首を左右に振る。

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