冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
「あなたに裏切られるのは一回だけでいい」

「俺を裏切ったのはお前だろう。ずっと俺の傍にいると言ったくせに」

「私のせいにするつもり?」

「俺のせいだとでも言うのか?」

 こんな言い合いをしたいわけじゃない。

 たぶん、藍斗さんもそう思っているから私を離してくれない。

「……離して。喧嘩したくない」

「そうだな」

 藍斗さんの腕がゆっくりほどけていくのを、悲しい気持ちで堪える。

 振り向いて抱き締めたら、彼はまた抱き締め返してくれるのだろうか。

 どうして好きになればいいと言ったのだろう。

 それは彼が望む妻の姿じゃないはずだ。

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