お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
「昔の話はおしまい。今はきっちり仕事をしなきゃ」

「……ああ」

 この関係はビジネスだ。

 私は藍斗さんから借金を返すための金をもらい、彼は望まない結婚を避ける。

目的を果たすための契約結婚に、過去の話ももどかしい感情も必要ない。

「また好きになると言ったな。お前は今、俺をどう思っているんだ」

 話を終えたと思ったのに、油断したタイミングで質問された。

「信用ならない人。……それだけ」

 感情を押し殺した声はひたすらに冷たく、自分で言っていてむなしくなった。

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