冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 好きになるなと言った口で好きになってもかまわないと言い、裏切ったくせに私を責める。触れられるのが嫌なら言えと気を使ってくれたのかと思いきや、こうやって後ろから抱き締めてくる。

 こんな矛盾した言動の人を信用できるだろうか。

「そうか」

 藍斗さんの答えは簡潔で、なんの感情も見いだせなかった。



 会場へ戻り、何事もなかったかのように再び夫婦を演じた。

 ありがたいことにすぐ目的の人物を見つけ、完全に意識がそちらへ向く。

「私も筑波さんとは一度お話ししてみたいと思っていたんですよ」

 先方の松田(まつだ)社長はかなり酔っているようで、声が大きい。

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