冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 そう思っていると、松田社長の視線が私を捉えた。

「ついお喋りに夢中になってしまった。こちらのきれいなお嬢さんはどちら様ですか? そのドレス、とてもかわいいです!」

「ありがとうございます」

 藍斗さんから見たさっきの私もこんな感じだったんだろうかと、少し恥ずかしくなっていると、松田社長がいきなり手を伸ばしてきた。

 あっと声をあげる間もなく引っ張られ、抱き締められる。

 なにが起きているの――と完全に思考停止したのも束の間、今度は藍斗さんに引っ張られた。

「ずいぶん酔っていらっしゃるようですね。水を頼みましょうか」

 藍斗さんの声はひどく静かだった。

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