冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
「お前には嫌われているんだと思っていた」

 藍斗さんの静かな声を聞き、もう一度首を横に振る。

「嫌いだったら、あなたに触りたいと思わない」

「だったら――」

「でも、好きでもない。ちょうど真ん中」

 好きだと認めたら、この関係は終わる。

 そうしないために嘘をついた。

「聞きたいことはそれだけ? 今日はお互い疲れちゃったし、このくらいにしない?」

「逃げるな」

 ソファを立とうとした瞬間、見透かしたように牽制される。

 腕を掴まれたわけでもないのに身体が動かなくなった。

「本気で、俺に触れられて平気なのか?」

「何度もそう言ってる。もう気にしてないよ」

「わかった」
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