冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない

 やっとわかってくれたのか、と思うと同時に藍斗さんが私の腰を抱き寄せた。

 思わぬ行為に驚いて、彼の腕の中に転がり込む。

「藍斗さん」

 彼はなにも言わず、ただ私を抱き締めた。

 松田社長に同じことをされた時、私はただ驚いて硬直するだけだった。

 藍斗さんに対しても同じだけど、戸惑いと動揺の方向性が違う。

「どうして抱き締めるの……?」

「お前が簡単にほかの男に抱かれるからだ」

「その言い方は、ちょっと」

 いつになった離してくれるのかわからなくて、だんだん居心地の悪さを覚える。

 さっきからずっと胸がどきどきして、心臓が痛い。

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