冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない

　うれしい気はするけれど、こんな真似をする理由が思い当たらないから困った。

「藍斗さんだって同じことをされたじゃない。それどころか、私と松田社長の奥さんが戻った時、袖を引っ張られてた」

「俺はなにをされてもかまわないが、お前はだめだ」

「理不尽だよ」

　かつて交際していた頃も、藍斗さんはときどきこんなふうに理不尽な独占欲をぶつけてきた。

　人前ではクールで余裕のある彼が、私の前では違うのだとうれしく思っていたけれど。

「……藍斗さんこそ、私をどう思っているの」

　さっき、質問されたことを藍斗さんに返す。

「嫌い？　それとも普通？」

「どちらでもない」

「……じゃあ」