冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 チェックインを済ませた藍斗さんとともに、旅館の庭園が見える廊下を通り、本館と離れた棟へ移る。

 高級旅館なだけあって、そもそもひとグループひと部屋という考え方ですらないらしい。

 なんと、ひとグループにつき一棟なのだ。

 ほとんど一軒家と変わらない広さの場所を、たったふたりだけで使えるなんて贅沢すぎる。さらに露天風呂までついているというから驚きだ。

「それでは、ごゆっくり」

 私たちが案内された棟は表札に『紫陽花(あじさい)』と書かれていた。

 さっそく中を見てみると、思っていた以上に広い。

「かくれんぼくらいならできそう」

「さすがに付き合うつもりはない」

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