冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
「たとえの話だってば」

 真面目に返さなくても、と笑いながらリビングと思われる部屋に入る。

 漆塗りの机に座椅子。奥には掘りごたつがあった。

 畳の上品な香りが鼻腔をくすぐり、非日常的な空間に来たことを教えてくれる。

「旅館に用意されてるお菓子を確認するのが好きなんだよね」

 机の上に置かれたお茶の道具を手に取り、お菓子を探す。

 でも、残念ながらそれらしきものはない。よく種を抜いた干し梅だとか、個包装のせんべいだとかがあるのだけれど。

「これの話をしているのか?」

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