冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 長い指につままれた金平糖が近づいてきて、ふにっと唇に押し当てられる。なにか言おうと口を開いた瞬間、中に放り込まれてしまった。

 思いがけずあーんされてしまい、ちょっと落ち着かない気持ちになる。

 ただでさえ、白い結婚の契約夫婦なのにふたりきりで旅行に来てしまっているのだ。そこでこんな本物の夫婦のような甘いやり取りをしたら、もうどんな顔をしていいかわからない。

「ありがとう。この後は観光?」

 じわりと熱くなった頬を見られないよう背を向けて、自分の荷物を取り出す作業に移る。

 とっくに自分のやることを終えたらしい藍斗さんが、畳に腰を下ろして私を見てきた。

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