冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
「特に決めていない。ここで過ごすのも、旅館内を探索するのも、どこか行くのも任せる」

「選択権は私にあるってことね。どうしようかな」

 この状況になにも感じていないふりをしていないと、とても彼とまともに話せそうにない。

 むしろ藍斗さんのほうこそ、よく平然としていられるものだ。

 それだけ、もう私に対してなんの感情もないということなのだろう。

「旅館の中で過ごそうか。あなたもよそのホテルに興味があるんじゃない? いろいろ学んで、新しいホテルの経営に生かさないと」

「旅行先でまで仕事か。色気もなにもないな」

 ふ、と藍斗さんが笑ったのを見て胸がどきりとした。

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