冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 ここへ移動するまでの間にも感じていたけれど、妙に藍斗さんの機嫌がいい。

 その理由がわからないから、私としては戸惑うばかりだ。

「俺の仕事を気にしないとしたら、どうしたい?」

「そう言われると急に困っちゃうな」

 自分のやりたいことと言われても、すぐに出てこない。

 優陽とだったらなにをするか考えてみる。

 まず部屋をぐるっと見て回ってから、ベッドの寝心地をたしかめてうっかりふたりで寝落ちし、観光する予定だったのにと大騒ぎしながら、今日はしょうがないから大浴場を楽しもうと気持ちを切り替える――とここまで考えて、くすくす笑う。

「なにかおもしろいことでも思いついたのか?」

< 184 / 271 >

この作品をシェア

pagetop