冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 そう言ってからふと、結婚してからはたまに言っていたかもしれないと気づく。

 結婚当初というよりは最近の話か。

 たぶん、彼が私に迫った時以降だろう。ずいぶんと気にしていたようだし、今もあまり表に出さなくなったとはいえ、意識しているように見えた。

「どう言えば俺らしくなるのか、お前にはわかるのか」

「どうだろう。でも今のは、ちょっと違うなって思った」

「俺よりも俺に詳しいんじゃないか?」

 あなただって、と言いかけてやめておく。

 お互いに、自分よりも相手に詳しいなんて――それは愛のない夫婦の会話じゃない。

< 190 / 271 >

この作品をシェア

pagetop