お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 このままだとまた妙な空気になりそうで、テーブルに手をついて立ち上がる。

「お風呂に入ってこようかな。藍斗さんは?」

「誘っているのか?」

「なっ、なんでそんな話になるの。大浴場のこと!」

「なんだ。露天風呂の話かと思った」

 たしかにこの部屋には、ふたりきりでゆったり楽しむのにぴったりの露天風呂がある。

 陽が暮れる前にどんな場所か確認したけれど、檜の香りがする素敵な浴槽だった。

 周囲は塀で囲まれているものの、頭上には空が広がっており、夜になれば星を見ながらの入浴ができそうだと思っていた。

「あなたと一緒にお風呂なんて入らないから」

「昔は入ったのにな」

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