冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
彼がどんなふうに入浴しているかは知らないけれど、私とは対角線の位置にいるのはわかっていた。
「信じられない。本当に一緒に入るなんて! 絶対冗談だと思ったのに」
「俺もいつお前が冗談だと言うのか待っていたんだが」
「今からでもあがっていいんだよ」
「人を追い出そうとするな。俺だって風呂に入りたい」
せめて濁り湯なら肌を見られなくて済んだかもしれない。
残念ながら嫌みなくらい透き通った温泉は、檜の湯舟のおかげかとろりとまとわりつく。
それが妙に艶めかしく思えてしまって、藍斗さんと一緒に入浴している状況をより意識した。
ちら、と背後を盗み見てすぐに前を向く。