冷血悪魔な社長は愛しの契約妻を誰にも譲らない
 八年前にも彼の肌を見たことがあるけれど、あの時よりも引き締まっている気がした。

 より研ぎ澄まされたように見えて、八年も経つと男の魅力が増すのだと感じさせる。

 脱がなくても藍斗さんは女性を惹きつける充分な魅力を持っていた。

 私のいない八年間、彼がどう過ごしていたのか考えるだけで胸が痛くなる。

「そこ、どうしたんだ」

 藍斗さんの訝しげな声が聞こえ、振り向かずに答える。

「そこって?」

「肩の……いや、背中か。赤くなっている」

「どこ?」

 とろみのあるお湯が波を打つ。

 その意味を理解する前に、さっきよりも近い位置で声がした。

「ここだ」

 びく、と肩が跳ねる。
< 195 / 271 >

この作品をシェア

pagetop