お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
 されて当然だと思い、してもらうために目を閉じた。

 でも、八年前ならともかく今の関係のままそうするのは間違っている。

「しちゃ、だめ」

 震えた声は消え入りそうなくらい小さくて、風が湯舟を撫でる音にさえまぎれそうになった。

「私……きっと、拒めないから」

 藍斗さんがゆっくり目を見開き、ぐっと顔をしかめた。

 直後、噛みつくように唇を塞がれる。

「――っふ」

 唇を割った舌が口内に侵入した瞬間、びりびりと全身に電流が走った。

 胸もとを隠していた手を開かれ、肌を暴かれても抵抗できない。

 囚われた手はしっかりと逃げないように繋がれていた。

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