お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
「すまなかった。謝って許されることでもないが」

「……優しくしてほしかった」

 一瞬動きを止めた藍斗さんに、私のほうからキスを贈った。

 ずっとそうしたかったからなのか、今度はうれしくて泣きそうになる。

「あなたがどんなふうに触れてくるか知ってたから、私の知っているやり方でしてほしかったの」

 指先でくすぐるように肌を甘やかし、キスの雨を降らせて、私を翻弄しながら搔き乱していく。そうやって彼は私をぐずぐずに溶かし、ベッドから出られなくなるまで愛してくれた。

「今は、優しくしてくれる……?」

「……誘惑するな」

 背中に回った腕が私を彼の胸に引き寄せる。

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