お飾り妻のはずが、冷徹社長は離婚する気がないようです
「優しくしてくれるか、だと? できると思うのか」

 抱きしめられているせいで藍斗さんの顔が見えない。

 でもひどく苦しそうな声がして心配になる。

「今ほどお前を泣かせたいと思った瞬間はない。めちゃくちゃに抱いて壊したいとさえ思っているのに、どうやって優しくしろと言うんだ」

 呼吸を乱して言うと、藍斗さんは私を突き放した。

「俺は、お前が知っている男じゃない。あの頃のままだと思うな」

 

 結局、藍斗さんは私を抱かなかった。

 ダブルベッドの端と端で、お互いに背を向けながら毛布をかぶる。

「……おやすみなさい」

「おやすみ」

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